5.原子核 06.中性子線の弾性衝突 難易度★★★★☆

5.原子

 物質の内部構造を探る手段の1つとして、中性子回折が広く用いられている。この中性子回折とそれに用いる中性子について、以下の問いに答えよ。解答は、答案紙(省略)の所定の場所に記入せよ。なお、結果だけでなく、考え方や計算の過程も記せ。

問1 中性子は波の性質を持っている。中性子の波は、物質中の規則正しく並んだ原子が作る平面(以下、格子面とよぶ)において、光の場合と同様に、入射する角度と同じ角度で反射する。また、異なる格子面で反射した波は、光と同様に干渉する。

 以下、図1に示す2つの隣り合う格子面(面Ⅰ及びⅡ)における中性子の波の反射について考える。2つの格子面の間隔をd,格子面と中性子の入射方向とのなす角をθ(0°<θ<90°),中性子の波長をλとする。

図1

(1)面Ⅰ及びⅡで反射した中性子の波の経路差を、λ, ,θの中から必要なものを用いて表せ。
(2)面Ⅰ及びⅡで反射した中性子の波が強めあう条件を、λ,d,θ及び任意の正の整数nの中から必要なものを用いて表せ。
(3)面Ⅰ及びⅡで反射した中性子の波が強め合う角度θが存在するために必要な条件を、λとdを用いて表せ。

(4)中性子の波の波長λは、プランク定数と呼ばれる定数hを用いて、以下の式で中性子の運動量pと関係づけられる。

 λ= h/p

    問1(3)の条件が成立するために中性子の速さvが満たすべき条件を、h,d,及び中性子の質量mの中から必要なものを用いて表せ。

(5)d=1.0×10-10mのとき、問1(4)で求めた中性子の速さの条件を、有効数字1桁の数値を用いて表せ。中性子の質量を、1.7×10―27㎏とし、プランク定数を6.6×10-34J・sとする。

問2 中性子回折に用いる中性子は、原子炉あるいは加速器によって生成する。生成直後の中性子は非常に速いため、都合の良い速さまで減速してから用いられる。中性子を減速するには、中性子を原子核と衝突させる方法がとられる。この衝突は、中性子が粒子としてふるまう性質から理解できる。以下、1個の中性子と1個の原子核が一直線上で弾性衝突する場合について考える。

 原子核は、陽子と中性子と呼ばれる2種類の粒子が集まってできており、陽子の数と中性子の数によって原子核の種類が変わる。また、陽子の数と中性子の数を足したものを質量数という。陽子と中性子の質量はほとんど等しく、ともに、mとすると、質量数Aの原子核の質量は、Aとmの積A・mで与えることができる。以下では、中性子と原子核をそれぞれの質量m、質量A・mの小球として考える。また、原子核の衝突前の速度をV,衝突後の速度をV‘,中性子の衝突前の速度をv、衝突後の速度をv’とする。

(1)このような一直線上の中性子と原子核の衝突いおける、衝突後の中性子の速度v‘をv,V,Aを用いて表せ。

(2)衝突前の中性子が原子核に対して十分高速である場合、V=0とみなせる。このとき。問2(1)の結果から、衝突後の中性子の速度v‘をv、Aを用いて表せ。また、衝突前後の速度の比の絶対値 |v’/v|を、 Aを用いて表せ。

(3)Aが2,4,9,19であるときの|v’/v|を、問2(2)の|v’/v|とAの関係から計算し、答案用紙のグラフ1(右図)に●(黒丸)で図示せよ。

(4)問2(3)の図から、中性子を減速するには、どのような質量数の原子核が効果的か述べよ。
(5)こんどは、原子核の速度が無視できない場合を考える。V>0で運動している原子核と衝突するとき、vとv‘の関係を答案紙のグラフ2(右図)で実線で図示せよ。また、横軸および縦軸との交点をAとVを用いて表せ。

(6)|v‘|=|v|の線を、答案紙のグラフ2(右図)に破線で記入せよ。問2(5)で描いた実線の一部が|v‘|>|v|の領域を通過することから、運動している原子核との衝突で、中性子が衝突後に早くなる場合があることがわかる。この実線と|v‘|=|v|の破線が交わる点を、答案紙のグラフ2(上図)に●(黒丸)で図示せよ。さらに、|v‘|>|v|となるvの範囲をAとVを用いて示せ。

(東北大)


【問題PDF】


【解説】


【解説PDF】

コメント