統計学_#004 家計はだんだん苦しくなっているのだろうか?

家計をやりくり 統計学
家計をやりくりする女性

世界は悪くなってはいない。良くなっている。(FACTFULNESSより)

前回の記事「統計学#003_平均値は、本当に真ん中くらいなのか!?」にて、日本の2020年平均貯蓄額(2人以上の世帯)が1791万円を記載させていただいてます。

この1791万円という平均貯蓄額は、今までどのように推移してきて、1791万円なのか? Newsなどで、今後の年金とか老後2000万円問題とか、よく悲観的な話を聞く。

さて、実際はどうなのだろうか?

私は、Factfulness (ファクトフルネス) という本を読んで、これら報道は何かが違うのかもしれない・・・とはおもってます。(全て違うとも思っておりませんが・・・)

ここで、 Factfulness (ファクトフルネス)ですが、内容を端的な言葉でまとめるならば、

世界は悪くなっていない。良くなっている。

という事を実際の数値にて解説されています。

実際に、世界の悪いことは減っており、良いことは増えており、それらをグラフで示されてました。

世界の悪いことは減っている

世界の悪いことは減っている。
ファクトフルネスより
世界の悪いことは減っている。 ファクトフルネスより

世界の良いことは増えている

世界の良いことは増えている。 ファクトフルネスより
世界の良いことは増えている。 ファクトフルネスより

さらに、人間には10の「思い込み」があり、その「思い込み」が原因で現実を歪めて見ていると、教育レベルの高い人、世界をまたにかけたビジネスマン、ノーベル賞受賞者でさえ、このような思い込みがあり、事実に基づいて世界を見ることが出来ていないと、著者のハンス・ロスリングさんがこの本の中でおっしゃっております。


2011-2020年の10年間で、貯蓄高はどう推移したのだろうか?

前述のデータで、2011年~2020年の10年間では、実際どのような推移をしているのだろうか?

2011年から2020年までの 

・貯蓄現在高 

・貯蓄保有額中央値 

・年間収入 

の3つの項目について、グラフ化してみた。

貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯)2011-2020年グラフ
貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯)2011-2020

貯蓄高には、ここ10年で増減はあるものも、大きくみると、やや右肩上がりではある。

ここで、貯蓄保有額の中央値のグラフの推移を見ると、ほんの少しだけあがってはいるものの、右肩下がりの悲観的な感じではなかった。

ただ、年間収入においては、減少はしていないものの、ほぼ横ばいと、今後の収入面においては、短いスパンではないものの、今後確かに右肩下がりになっていくのでは・・・と思われても仕方がないのかもしれない。


では、働いている世帯の貯蓄高は10年でどう推移したのだろうか!?

貯蓄現在高のグラフにおいては、既に退職をされて、年金暮らしをされている方々も含まれている。

60歳以降で退職されて、多額の退職金をもらっていて、その方々の貯蓄高が含まれているので、実際は、勤労者だった人が仕事を辞めだす60歳代が最も貯蓄高が高いことになっており、実際働いている勤労者世帯のみに限定すると、現在貯蓄高の平均値・中央値は下がり、年間収入はアップすると考えられるが・・・

実際に、貯蓄現代高の推移で、二人以上世帯のうち、勤労者世帯のみと限定すると、以下のグラフになります。

 貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)2011-2020年グラフ
貯蓄現在高の推移(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)2011-2020

働いている二人以上の世帯では、貯蓄高もこの10年で約145万円も増えており・・・

中央値でも、10年間で100万円近くも増えている。

年間収入においても、10年間で約60万円増えているので、ざっくりとした計算では、毎年平均6万円ほど収入は増えたことになる。


では、貯蓄高を階層別に比較してみよう。

2020年度の世帯(2人以上の)勤労者の貯蓄残高は10万人あたりで比較すると・・・

貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯 10万人比) 2020年

貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯) 2020年  (10万人比)   ヒストグラム
貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯) 2020年 (10万人比)

これが、2011年ではどうだったかというと・・・

貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯  10万人比 ) 2011年

貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯)2011年 (10万人比)   ヒストとグラム
貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯) 2011年 (10万人比)

であり、同じ10万人比較で、2020年度から、2011年度を比較すると・・・

貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯  10万人比 ) 2020年ー2011年比較

 貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯) 2020年-2011年ヒストグラム(10万人比)
貯蓄高 階級別(2人以上の世帯:勤労者世帯) 2020年-2011年ヒストグラム(10万人比)

2011年から2020年にかけて、10万人あたりであるが、100万円未満、100ー200万円の世帯は大幅に減少し、逆に4000万円以上貯蓄高世帯は大幅な伸びを示している。


なぜ、世界は良くなっている・・・と感じられないのだろうか?

ここ10年だけ見ても、貯蓄における数値は確かに改善されていると思われる。

しかし、数値の取り方によってもグラフの見え方は違うとは思われるし、数値が悪くなるような資料を並べたり、グラフの軸の取り方、見せ方によっても以前より悪くなったかのようにすることは結構簡単に出来てしまうものである。

あとは、貯蓄残高(2人以上:勤労世帯のみ)の平均値は、それでも、1378万円であり、中央値でも826万円である。(貯蓄「0」世帯を含めた中央値は参考値として782万円)

階級を粗くとって分かり易く円グラフにすると、下のようになります。

貯蓄現在高階級別 2020年 2人以上世帯勤労者のみ(10万人比率)の円グラフ

貯蓄現在高階級別 2020年 2人以上世帯勤労者のみ(10万人比率)の円グラフ
貯蓄現在高階級別 2020年 2人以上世帯勤労者のみ(10万人比率)の円グラフ

やはり、勤労者の貯蓄平均値1378万円であるにも関わらず、貯蓄1000万円以下の世帯は実に57%もある。特に貯蓄500万円を切る世帯は37%もある。

格差社会が深刻になっているというよりも、むしろ、既に訪れている格差社会への不安をそのまま言葉にしないと記事にならないからだからかもしれない。

報道やインタビューでは、N=1のような個人的な話や、少人数の話を、あたかもそれが日本全体を示していると見せることで、世間は悪い方向に向かっているとも見せる事も結構あるように見受けられる。

一度、リストラ、派遣切りなどで収入源を失い、貧困状態に陥った人たちに対しても、それがあたかも、今後自分のもとに降りかかるように感じてくるような記事になるのである。

ニュース・新聞などの報道は、常に異常値に目を向けられがちで、それがあたかも正義であると報道される。もし、「世界はよくなっている」と記載して、何か一つでも都合の悪いデータが出てきたら。「世界は良くなっている」という記事に過剰なまでの非難が起きることもあるので、「世界は良くなっている」とは記事にならないし、それらを見る視聴者や読者にも、だんだんと世の中は悪くなっている、格差は広がっていると感じさせているからなのでしょう。

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